オタクを題材にした内容

読んでみると、基本コメディだが時折重くなる

オタク文化を広めるために主人公が異世界へと連れて行かれる話となっているが、そうした物語の中核とも言える部分を紐解いていくと、作中における表現とは一線を画した思惑が見え隠れてしているのを見ることが出来る。また、巻を読み進めることによって必ずしも原因だとはいえない部分があるとしても、影響力は強く働いてしまっている現実での事件にも繋がる部分があるなど、作者の文化に対する皮肉めいた側面を垣間見ることも出来る。それに対して否定することは出来ないが、現実に考えると実際に空想と現実の区別が出来なくなってしまっている人がいるのは、認めなくてはならないからだ。

この作品でもそんなオタク文化によってもたらされる影響力によって起こる事件、また決して表沙汰に出る事のない真の思惑なども垣間見ることが出来るなど、色々と考えさせられる部分があったりする。今度はそういったところも込みで考察してみよう。

そもそも侵略を目的としていた

主人公がオタク文化を広げることを題材にした作品となっているが、物語を読み進めるとわかってくるのは日本政府が既に異世界の存在を認知しているということだ。もちろん世間には知られないよう極秘事項として取扱われていたわけだが、何故既にその存在を把握していたにも関わらず政府主導で事を進めなかったのかだ。

その理由として文化的交流を図ろうとしたが、相手方にあまり好意として受け取ってもらえなかったところが主人公を起用することへと繋がる。政府が何を伝えようとしていたのかというと、日本固有の文化である陶器などの伝統文化財を持参したが、異世界側すれば全くもって理解されることはなかった。そこで考え出されたのが、日本でもまた浸透しやすいといえるオタク文化の伝来である。しかしそこで問題が起きた、官僚などの役人がどうしてもそのような文化について説明をするとなったら偏見が出てしまうからだ。それではさすがにまずいだろうと考えられたため、民間からの協力者を求めることにした。

もちろん誰でも良いというわけではない、協力者としても条件が加味されている。主人公がその条件に該当していたからこそ選ばれたのだが、決していいものではなかった。どのような条件の人間がいいのかと考えられたところ、

この世からフラット消えても違和感のない、いつでも証拠ごと処分することが出来る人間

といったような、社会的に例え何があろうと排除されたところで支障をきたさない人間であれば問題ないと政府は判断したのだ。そしてその条件に主人公は当てはまってしまい、その後半ば無理矢理な形で彼を異世界へと送り込んだのだ。

また日本側としてはコレはあくまである計画の一端に過ぎない展開であり、真の目的が見え隠れしている。それはこの文化的交流をもってして異世界の国を侵略してしまおうというものだった、主人公の存在はあくまで侵略行為のきっかけであり、普及すれば間違いなく自分達の手の中で事を進める事が出来ると見ていた。その後無事に征服が完了した暁には主人公を排除して危険因子となる可能性を取り除く、といったところだろう。そうした歴史において決して表に出ることがない思惑が錯綜しているのを見ることが出来る。

しかしそうした意図は異世界側としても把握しており、文化交流をきっかけに侵略行為に近いものだろうと考えていた。実際、異世界側としては十分な戦力を割けるようにと武装準備を整えていたこと、また同時に異世界における他国同士の戦争の真っ只中にいたため、何かあれば全面衝突も免れないと見ていた。事実として作中で対立が激化するような気概を見せるなど、こういった点でも現実味を帯びた内容になっているのは中々面白い要素と見ることが出来る。

作家講座

否定的ながらも、好意的に受け入れられていった

日本政府と異世界側との思惑が画策する中で主人公はただ純粋に、オタク文化を広めようと動いていたこともあって最初の頃は籠城といった事件に巻き込まれながらも何とか会社の代表として、文化的振興を積極的に行っていった。途中、日本政府からもはや用なしとして暗殺を企てられたり、また主人公が他国へ拉致・誘拐されたときもそれを好機と見なして自分たちにとって都合の良い人間を代表に挿げ替えようとするなど、実に理不尽な世界観が出ているのもこの作品では良点だ。文化的交流を図るにしても既存の文化を破壊する事無く、またお互いに分かり合うために広まるというのは簡単に見えて実は非常に難しい。その事は第1巻においてもその難しさと、また分かり合おうと思えないような異世界の人々の態度も現実においてよく見られる点だといえる。

榊氏の深く抉ったこんな部分は現代のオタク文化がおかれている状況を風刺めいて見ているのかもしれない。

本、読んでる?
ライトノベルの作家になろう!